「風邪引くよ」









篠突く雨







そう言って差し出された一本の傘。体が雨から遮られる。



「ああ…夜神か」



が死にそうなけだるそうな視線だけを向けても、東応の秀才は笑いながら傘を引こうとしはしなかった。



「ほら」
「つっても、俺すでにずぶ濡れだから意味無いと思うけど」

「水も滴る良い男、かな」
「馬鹿みてえ」




素直にが顔を歪めてそう言っても、月は気分を害さなかった。ただ、諦めたのか差し出していた傘を引き閉じて、自分の傘を持ち直す。 その間、は月など端から居ない様に空を見上げていた。


黒過ぎる空。冷た過ぎた雨。これがこの世。


天に向かって手を伸ばすと水滴が肘に滴り落ちた。 でもそれすら判らない程雨は容赦無く降り続けた。確実に彼を打っている。 横目で月を見ると、愉しそうに自分を見ていた。



「帰らないのか」
「退屈してるんだ。見てたら暇潰しになりそうだから」
「は、最高だな。さぞかし女にもてるだろう」
「まあね。でもも人気あるだろ」
「興味無い。……お前」




は冷めた目で月を一瞥した。濡れた前髪を掻き上げる。余談だがそれは女子卒倒もの程様になっていた。



「濡れるの嫌か」
「…ああ、そりゃあ。どうして?」
「傘差すのが巧いのか…濡れてないな、殆んど」



足以外は、恐らく。自分より少し低い体を見下ろしながら考える。
―――ああ、そういえば。



はズボンのポケットに手を突っ込んで歩き出した。地面がぱしゃぱしゃと鳴る。


振り向かないで、至極愉快そうに笑って言った。



「夜神」
「ん」





「後ろの奴にもちゃんと差してやれよ。――傘」







月の後ろに居るのは















(060318)